静寂が語る、フィジー始まりの地。最古の村「ビセイセイ」で触れた幸せの原風景
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喧騒を離れ、時が止まったかのような静寂に包まれる場所。ナディとラウトカの間に位置する「ビセイセイ村(Viseisei)」は、フィジー全土に広がるコミュニティの源流であり、この島に人類が最初に降り立ったと言い伝えられる伝説の地です。今回、ガイドのAtuとともに足を踏み入れたその場所には、私たちが忘れかけていた「真の豊かさ」が息づいていました。

1. 旅人の命を繋いだ「空に実る炭水化物」
フィジーの主食といえば、タロイモやカッサバなど「土の中」で育つ根菜が一般的。そんな中で、唯一「木の上」に実る貴重な炭水化物(カーボン)源が、ブレッドフルーツ(パンノキ)です。Atuが教えてくれたのは、かつて航海者たちが長い旅に出る際、この実を船に積み込んだという歴史。「焼くと外側は真っ黒になりますが、中はふわふわとした白いパンのよう。だからブレッドフルーツと呼ばれています」。ビセイセイ村はこの木が非常に多く、今も村の食卓を支え続ける「生命の木」なのです。
2. 父の功績を称える、サンダルウッドの香り
民家の庭先に凛と立つサンダルウッド(白檀)の木。フィジーでは、父親が仕事をリタイアした際に、その人生の功績を祝して庭に植えられる習慣があるそうです。高貴な香りを放つこの木は、家族の誇りの象徴。世代を超えて受け継がれる植物とともに暮らす、サステナブルで優雅な人生のあり方に心が洗われます。
3. 敬意を形にする、チーフ制度と信仰
村の中心には、伝統的な「チーフ制度」を守り続けるチーフの家、そして立派な教会がそびえ立ちます。毎週日曜日は、村中が祈りを捧げる大切な日。教会での座席順(年配者、男性、女性など)に至るまで、秩序と敬意が保たれています。この「規律ある調和」こそが、村を一つにまとめ上げる強固な基盤となっているのです。
4. 「分かち合い」が生む、絶対的な安心感

ガイドのAtuに「あなたにとっての幸せとは何か」と問うと、彼は「他人ファーストでいること。なんでも共有することだよ」と答えました。バナナやマンゴー、海で獲れた魚、それらはすべて村のみんなで分かち合うのが当たり前。雨が降れば隣人の洗濯物を取り込み、夕食のテーブルには自然と誰かが加わる。「所有」よりも「共有」に価値を置く暮らしには、孤独が入り込む隙間もありません。
5. 出生証明書に刻まれた、永遠のアイデンティティ
フィジーの出生証明書(Birth Certificate)には、代々の先祖がどの村の出身であるかが明記されています。女性は結婚すると男性の村へと移り住みますが、自身のルーツは常に証明書に刻まれ続けます。彼らにとってビレッジは単なる居住地ではなく、自身のアイデンティティそのもの。ビレッジ同士が深く繋がり、互いに助け合って生きる精神こそが、フィジーが世界一幸せな国と呼ばれる最大の理由なのだと確信しました。
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Editor’s Reflection
華やかなリゾートも素敵ですが、歴史ある村を訪れることで、旅は精神的なものへと変わります。始まりの地・ビセイセイで感じた穏やかな風は、私の心に新しい「幸せの種」を運んできてくれました。

